法定相続証明情報証明制度の創設の目的
相続登記がなされないまま放置されることは、所有者不明土地問題や空き家問題を生じさせる大きな要因の1つであるとされておりました。
そこで、相続人の相続手続における手続的な負担の軽減とこちらの制度を利用する相続人に、相続登記を直接促すきっかけを作り出すことにより、今後相続登記がなされないまま放置されることのないようにするとともに、相続登記を促進するために、新たな制度として創設されたものです。
法定相続情報一覧図について
目次
(1)法定相続情報一覧図とは
土地や建物の登記簿上の所有者等がお亡くなりになられた(相続が開始した)場合において
法定相続情報一覧図とは
特定のお亡くなりになられた方(被相続人)の | ① 氏名 |
② 生年月日 | |
③ 最後の住所 | |
④ 死亡年月日 | |
お亡くなりになられた方の相続開始時における | ⑤ 同順位の相続人の氏名 |
⑥ 同順位の相続人の生年月日 | |
⑦ 同順位の相続人のお亡くなりになられた方(被相続人)との続柄 |
を一覧図にした書面のことです。
この法定相続情報一覧図の写しを取得するメリットは、費用と時間の短縮です。例えば、故人が複数の金融機関に預金口座をお持ちであった場合、通常金融機関には戸籍の謄本等一式(原本)を提出する必要がありますが、複数の金融機関に同時並行で手続を行う場合、金融機関分の戸籍の謄本一式が求められてしまいます。それだと、かなりの枚数となる可能性があり重たく、かつ費用もかなりの金額がかかってしまいます。
そこで、この法定相続情報一覧図の写しの登場です。こちらを作成する際、添付書類として、戸籍の謄本一式1セットは必要となるのですが、法定相続情報一覧図の写しを一旦取得してしまえば、それを戸籍の謄本等一式の代わりに使えます。そうすると、重たい戸籍の書類の束を金融機関の窓口に持っていかなくても済みますし、複数の金融機関に同時並行で手続きを行うことも可能となります。
また、この法定相続情報一覧図の発行手数料は無料なので、必要な枚数分、無料で取得することが可能です。
法定相続情報一覧図の写しは、現在、相続税の申告、相続登記申請等で使用できる状況です。今後、使える場面が拡大してくると思われますので、早い段階に取得方法に慣れておくとよろしいかと思います。
(2)取得の時期はいつが良い?
ズバリ、相続が開始したら、戸籍の謄本等一式を取得した後、すぐに法定相続情報一覧図の写しを取っておくのがよろしいかと思います。その段階で取得すれば、いろいろな場面で使用できます。
例えば、事前に相続人の住所が記載された法定相続情報一覧図の写しを取得しておけば、相続登記を書面で申請する際、法定相続情報一覧図の写しを添付すれば、相続関係説明図・住民票の写しが不要となります。
戸籍謄本等の提出に関しても一部例外(注)もありますが、法定相続情報一覧図の写しを添付すれば省略することができます。なお、法定相続情報一覧図の写しは原本還付が可能ですので、原本還付をすれば別の用途でも使えます。
(注)法定相続情報一覧図の写し(原本)を添付しても戸籍謄本等が必要となる場合
➀ | ➀平成25年9月4日以前に開始した相続につき、相続人たる被相続人の子が複数いる場合で法定相続情報一覧図が列挙形式で嫡出子・嫡出でない子の併記がないため、その区別が判明しない場合(嫡出子・嫡出子でない子の法定相続分の疎明のため、別途戸除籍謄抄本を添付する必要があります(平成30年6月11日法定相続証明制度に関するQ&A.Q8・H25.12.11民二781局長通達参照)。) |
➁ | ➁兄弟姉妹が相続人であって、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹と父母の双方を同じくする兄弟姉妹がいる場合で法定相続情報一覧図が列挙形式であり、父母の一方のみを同じくするのか、双方を同じくするのかの情報の併記がないためにその別が判明しない場合(平成30年6月11日法定相続証明制度に関するQ&A.Q9)。 |
なお、司法書士の場合、オンラインで相続登記申請する場合も多々あり、その場合には、上記の事例だと相続関係説明図のPDF添付も必要となりますが、本サイトを使用される方は書面申請でされる方がほとんどであると思われますので、その説明は割愛させて頂きます。
(3)法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出
法定相続情報一覧図の保管とは、法務局が5年間、法定相続情報一覧図の写しを預かっていることです。
法定相続情報一覧図の交付の申出をする際に、同時に保管の申し出も行っておりますので、以後5年間(申出日の翌年から起算)、無料で法務局の証明がある法定相続情報一覧図の写しの交付を受けることができます。
法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出のやり方としては、必要書類を収集し、法定相続情報一覧図を作成したのち、
「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」をプリントアウトして必要事項を記載したうえ、これらを
管轄一覧
➀ | 被相続人(お亡くなりになられた方)の本籍地(死亡時の本籍を指します。) |
➁ | 被相続人(お亡くなりになられた方)の最後の住所地 |
③ | 申出人の住所地 |
➃ | 被相続人(お亡くなりになられた方)の名義の不動産の所在地 |
のいずれかの地を管轄する登記所に直接又は郵送にて申出をすれば、法定相続情報一覧図の写しの保管と法定相続情報一覧図の写しを取得することができます。
(2)法定相続情報一覧図の再交付の申出
法定相続情報一覧図の写しが足りなくなった場合に、当初に法定相続情報一覧図申出の際、申出書に「申出人」として氏名を記載した方は、申出日の翌年から起算して5年以内に、法定相続情報一覧図の再交付の申出をすることにより、再交付を受けることができます。
(3)法定相続情報一覧図の写しに関する注意点
➀ 数次相続が生じている場合、一つの法定相続情報一覧図にまとめて記載することはできません。それぞれ被相続人(お亡くなりになった方)ごとに法定相続情報一覧図を作成し、それらを組み合わせて対応することになります。
➁ 被相続人と相続人全員が日本国籍を有していなければ、法定相続情報一覧図の写しの保管及び一覧図の写しの交付をすることができません。