財産分与は、離婚に伴い生ずる権利変動のため、財産分与の登記原因日付は、
離婚日より前に財産分与協議日が成立している場合は、離婚日となります(登記研究490号160頁参照)。
一方、離婚日より後に財産分与の協議が成立している場合は、財産分与協議日が登記原因日付となります。
では、財産分与の対象となる不動産で、住宅ローンの抵当権が設定されており、財産分与協議現在では未だ、住宅ローンの抵当権の被担保債務が完済されていない場合はどうでしょうか。
住宅ローン契約約款には、通常、譲渡するときは、「あらかじめ書面により抵当権者の承諾を得るものとします。」旨の記載があり、承諾を得ずに譲渡すると、契約違反となり、期限の利益喪失自由の1つに該当し、残金一括請求を受けてしまう可能性があります。
よって、元夫婦間でも移転する場合は、銀行等の承諾が必要となるのですが、譲渡を受ける方が同等以上の収入がないと承諾は受けられないのが実状かと思います。
(債務引受、借換等のスキームもあるかと思いますが、割愛させて頂きます。)
そうすると、元所有者の方のほうで完済をしてから、財産分与を原因とする所有権移転を行う形が多いのではないかと思います。
以下、その場合の登記原因証明情報の書式を載せます。
登記原因証明情報
1.登記申請情報の要項
(1)登記の目的 所有権移転
(2)登記の原因 令和 年 月 日財産分与
(3)当事者 権利者 東京都○○区✕✕
甲野 和子(以下「甲」という。)
義務者 東京都●●市✕✕
司法 太郎(以下「乙」という。)
(4)不動産の表示
所在 ●▼■✕
地番 ●▼■✕
地目 ●▼■✕
地積 ●▼■✕㎡
所在 ●▼■✕
家屋番号 ●▼■✕0
種類 ●▼■✕
構造 ●▼■✕
床面積 1階 ●▼■✕㎡
2階 ●▼■✕㎡
2.登記の原因となる事実又は法律行為
(1)財産分与
甲と乙は,令和●年●月✕日,乙が甲に対し,本件不動産を離婚に伴い分与する旨の協議を成立させた。
(2)離婚
甲と乙は,令和●年■月▼日,協議により離婚した。
(3)所有権移転時期の特約
上記(1)の財産分与には,本件不動産に設定されている●●名義の抵当権(平成○○年●月■日受付第○○○号 共同担保目録(●)第○○○/○○○号)の被担保債務を乙が完済した時に,本件不動産の所有権が甲に移転する旨の所有権移転時期に関する特約が付されている。
(4)被担保債務の完済
乙は,令和 年 月 日,上記(3)の被担保債務の全額を弁済した。よって,同日,同(3)の抵当権は,被担保債権の消滅により消滅した。
(5)所有権の移転
よって,本件不動産の所有権は,同日,乙から甲に移転した。
令和 年 月 日 ○○法務局 御中
上記の登記原因のとおり相違ありません
(権利者)
住 所 東京都○○区✕✕
氏 名 甲野 和子
(義務者)
住 所 東京都●●市✕✕
氏 名 司法 太郎