「登記識別情報不通知」にした場合、何か不都合があるの?
そもそも登記識別情報とは
登記識別情報とは、12桁の英数字が羅列されたもので、イメージとしては銀行の暗証番号みたいなものです。
平成16年不動産登記法改正前までは、登記済証(「権利証」と言ったほうがわかりやすいかもしれません)と言われるものが登記義務者(その登記をすることで不利益を受ける人。例えば、売買であれば売主のこと)の登記申請意思の確認のために、この登記済証(権利証)が使用されておりました(なお、この改正前に不動産を取得し、その後、不動産の権利を移転していない場合は現在でも権利証をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。)。
しかし、上記改正により、この改正後に不動産を取得した場合は、登記済証(権利証)は発行されず、それに代わって登記識別情報が通知又は発行されるようになりました。なお、紙で発行してもらった場合は、紙切れ1枚(外観上は、A4より小さい紙に12桁の英数字が目隠しで見えないようになっております。)。
登記識別情報は通知するかしないかを選べます
法務省のホームページにも載っている「登記識別情報通知の通知を希望しません」にチェックを入れた場合は、登記識別情報は通知されません(発行されません)。一方、本サイトに載っている申請書のとおり、「送付の方法により登記識別情報の交付を希望する」といった振り合いで登記識別情報の通知を希望すれば、登記識別情報は通知(発行)されます。
「登記識別情報の通知を希望しません」にチェックを入れてしまった場合の問題点
法務省のホームページにも載っている「登記識別情報通知の通知を希望しません」に誤ってチェックを入れてしまった場合、何が問題となるのでしょう。
答えとしては、相続した物件を転売するような場合や、相続した物件を担保にしてお金を借りるような場合は、不都合が生じます。
それは、転売の場合(売買による所有権移転登記申請等)や、不動産を担保にしてお金を借りる場合(抵当権設定、根抵当権設定等)、添付書類として「登記識別情報」が必要となります。
しかし、「登記識別情報の通知を希望しません」にチェックを入れてしまうと、登記識別情報は発行されません。それではどうするのかというと、本来必要となる書類がないので、代替的な方法が必要となってきます。
それが、司法書士又は弁護士(資格者代理人)による本人確認情報の提供です。
司法書士や弁護士が登記識別情報通知書を持っていない方と面談をし、運転免許証等で本人確認を行い、どうして登記識別情報通知書をお持ちでないのか事実関係の聴き取りを行い、「本人確認情報」という書類を作成し、これを登記識別情報の代わりとして添付書類として提出します。
この書類は残念ながら無料ではありません。結構費用がかかります。書類作成報酬として相場的には5万~10万ぐらいはかかると思っていただいたほうがよろしいかもしれません(報酬の自由化により事務所によって費用は異なります)。
このように、登記識別情報を不通知にしてしまうと司法書士等に余計な報酬を支払わなければいけないことになります。
なお、本人確認情報の作成以外の代替手段として、「事前通知」という制度もありますが、仲介、銀行融資がからむ場合には、実務上利用はされておりません。
登記識別情報不通知のメリットも一応はあります
登記識別情報不通知のメリットも存在します。それは、登記識別情報通知書の管理をしなくて良いことになることです。登記識別情報は、その名の通り情報です。物理的な「登記識別情報通知書」を盗まれないようにするだけでは足りません。それに加え、そこに記載された12桁の英数字の符号を盗み見られないように(メモされないように写真に取られないように)することも必要となります。
裏を返せば、登記識別情報の通知を希望するを選択された場合のデメリットとも言えます。
登記識別情報不通知を選択される方はどんな人?
管理が面倒でかつ、自らがお亡くなりになるまで転売もしないかつその不動産を担保にしてお金を借りたりしないというような方は、「登記識別情報を通知しない」という選択肢も無きにしもあらずではないかということになります。