生前にお父さんが数百万円のリフォームローンを組んで自宅に抵当権設定。その後、無事完済をしたのはいいものの、リフォームローンの抵当権を抹消せずに、お父さんはお亡くなりになってしまった。
どうすればよいでしょう。
この場合、登記申請の順番としては、
➀抵当権抹消
➁相続登記
となります。実体法上の権利変更過程を如実に登記記録に公示しないといけないためです。
しかし、➀の抵当権抹消、お父さんは既にお亡くなりになっております。この場合、お亡くなりになった相続人(例えば、奥様、お子様。)が一般承継人として権利を承継しているため、お亡くなりになった方の承継人の立場で登記の申請をしていくこととなります(不動産登記法62条、不動産登記令7条1項5号イ)。
➀の抵当権の被担保債務が弁済された際、抵当権者から抹消書類一式が送られてきているでしょう。送られてきた書類を全て取っていれば、基本的にその書類で登記の申請は可能と思われます(権利変動過程を真面目に考えていくと色々と突っ込みたくはなるのですが)。
登記原因証明情報としての解除証書には、お亡くなりになられたお父様のお名前が記載されているかもしれませんが、その点は問題ありません。その書類で使用可能です。
抵当権者の社名や本店が当時と異なる場合もあります。その場合には、単なる商号変更(社名変更)が続いていたに過ぎないのか、本店移転を何度も行ったにすぎないのか等、しっかり連続してつながっているかどうか、履歴事項証明書、閉鎖事項証明書をご自宅の最寄の法務局に行って調べる必要があるかと思います(cf.コンピューター化前に事実関係の場合には、コンピューター化に伴う閉鎖謄本を管轄法務局まで足を運んで調べなければいけません)。
また、当時の代表取締役が現在の代表取締役とは異なることがほとんでしょうから、抵当権者の委任状や解除証書(登記原因証明情報)に載っている代表取締役の代表権限がいつからいつまでだったのかを履歴事項証明書や閉鎖事項証明書等に載っている役員欄を見て調べる必要があります。
理由は、登記申請書に「その他の事項」として、「登記義務者の代表取締役○○の代理権限は消滅している。代理権限を有していた時期は平成●年●月●日から令和●年●月●日である。」等の振り合いで記載をしないといけないからです。
手元に抹消書類が存在しない場合は、当時の抵当権者に連絡を取って、再発行をしてもらう必要があります。その際、注意が必要なのは、当時の書類送付案内等に載っている連絡先に電話をしても、つながらない場合が多いです(会社としては、現在も存続しているものの、電話番号自体を変更していたり、会社名が全く変わっている場合も往々にしてあるためです)。
当時の抵当権者が未だ存在をしていればよいでしょうが、その後、自己破産をしていたり、解散しているという可能性も普通にあります。そのような場合には、一般の方はどうすれば良いのか(誰に連絡を取れば良いのか、また、連絡を取る相手がいない場合、どういう手続を法的に踏めば良いのか等)なかなか手に負えないと思いますので、専門家に相談をされるのがよろしいかと思います。
参考書式
※登記原因の記載や添付書面欄は、事案により記載方法が異なります。ご注意下さい。
登 記 申 請 書
登記の目的 ●番抵当権抹消
原 因 平成○○年●月●日解除
権 利 者 東京都○○
亡A相続人司法 和子
東京都○○
亡A相続人司法 太郎
義 務 者 東京都○○
●✕株式会社
代表取締役 乙田 次郎
添付情報
登記原因証明情報 登記済証 登記事項証明書 変更証明書
代理権限証明情報
令和4年●月✕日申請 管轄登記所 東京法務局●●出張所 御中
申請人兼義務者代理人 東京都○○
司法 太郎
連絡先の電話番号 080-○○○●-●✕●✕
登録免許税 金2,000 円
その他の事項
登記義務者の代表取締役乙田次郎の代理権限は消滅している。
代理権限を有していた時期は平成26年6月15日から令和2年12月22日である。
不動産の表示
一棟の建物の表示
所 在 ○○区●✕四丁目 2番地2
建物の名称 ●✕
敷地権の目的である土地の表示
土地の符号 1
所在及び地番 ●●区●✕四丁目2番2
専有部分の建物の表示
家屋番号 ●✕四丁目2番2 5番2の501
建物の名称 第501号
種類 居宅
構造 鉄骨鉄筋コンクリート造1階建
床面積 5階部分 64.01㎡
敷地権の表示
土地の符号 1
所有権の種類 所有権
敷地権の割合 184800分の6200