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租税特別措置法第84条の2の3第1項による免税措置のリアルな具体例

相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合(租税特別措置法第84条の2の3第1項)の登録免許税の免税措置のリアルな具体例

個人が相続(相続人に対する遺贈も含む。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、登録免許税を課さないこととされております(ただし、平成30年4月1日から令和7年(2025年)3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記に限る)。

今回は、実際に、自身が案件として経験したリアルな具体例を脚色して説明させて頂きます。

具体歴としては、
司法太郎(父)さんが亡くなり、相続人は、司法和子(母)さんと司法次郎(息子)さんでした。相続財産が土地2筆(底地と私道持分)と建物でした。しかし、お父さんが亡くなっても、奥さんと息子さんは遺産分割協議も何ら行わず、法定相続による名義変更(相続登記)もせずに、放置をしておりました。

そうこうしているうちに、今度は司法和子さんが亡くなりました。この場合、最終的には、息子の司法次郎さんが土地と建物を相続することになるかと思います。

その場合の登記申請手続はどのようにすればよろしいのでしょうか。

この場合、結論としては、中間の相続が単独ではないため、1件での申請はできません。よって、原則通り、2件(連件)の申請を行う形となります。

1件目は、
所有権移転及び司法太郎持分全部移転

2件目は、
司法和子持分全部移転

登記申請を行うことになります。

1/2 登 記 申 請 書

登記の目的     所有権移転及び司法太郎持分全部移転
原因        平成14年8月23日 相続
相続人        (被相続人 司法太郎)
東京都〇×区〇△四丁目7番11号
持分後記記載のとおり(注1)(亡)司法 和子
上記相続人
東京都〇×区〇△四丁目7番11号
司法 次郎
東京都〇×区〇△四丁目7番11号
持分後記記載のとおり(注1) 司法 次郎
連絡先の電話番号 080-××××-××××
添付情報
登記原因証明情報 住所証明書 代理権限証書
令和4年11月19日申請 東京法務局〇×出張所 御中

課税価格        1,294万7,000円(注2)
登録免許税      5万1,700円
租税特別措置法第84条の2の3第1項により一部非課税(注2)

その他事項   送付の方式により登記識別情報通知書・原本還付書類の交付を求めます。

送付先の区分    申請人の住所

不動産の表示
所  在  〇×区〇△四丁目
地  番  1289番13
地目    宅地
地積    134.48㎡
(注1)上記持分2分の1 (亡)司法 和子
2分の1 司法 次郎
(此の価額 2,140万4,770円)
所  在    〇×区〇△四丁目
地  番    1289番17
地目    宅地
地積    171.66㎡
(注1) 上記持分4193分の266  (亡)司法 和子
持分4193分の266  司法 次郎
(此の価額 103万9985円)
(㎡単価 15万9,166円)

所  在  〇×区〇△四丁目 1289番地13
家屋番号  1289番13
種類    居宅 共同住宅
構  造  木造瓦葺弐階建
床面積   1階 75.94㎡
2階 77.04㎡
(注1) 上記持分2分の1 (亡)司法 和子
持分2分の1 司法 次郎

(此の価額 172万5,200円)

(注1)
持分が全て2分の1ずつ各自に承継されるのであれば、本件のように「持分後記記載のとおり」との振り合いをして不動産の表示の末尾に記載をする必要はありません。申請人欄に「2分の1」と記載をしていけばよいのです。本件では、土地・建物は2分の1ずつで同一ですが、私道持分が2分の1ではないので、このように、申請人欄に「持分後記記載のとおり」と記載をして、不動産の表示の末尾にそれぞれの持分を記載していただく形となります。

(注2)
① (亡)司法和子様が相続する部分に関しては、課税されませんので、当該部分を除外して計算をする必要があります(登録免許税を課さない⇒課税されないということを意味します。)
② 免税されるのは、土地のみなので、建物は(亡)司法和子様が相続する部分も課税される点に注意です。
③ 1289番17の土地は、登記記録上「宅地」となっておりますが、現況が「道路」の場合、登録免許税の計算方法は、通常の計算方式と異なります。

この場合、近傍宅地の㎡単価×道路の面積×30/100となります。通常近傍宅地は、本件相続登記の申請となる建物の底地の㎡単価を計算すれば問題ないかと思います。よって、本件相続登記の申請となる1289番13の宅地の㎡単価は、2,140万4,770円÷134.48㎡=15万9,166円となります。

④ 1289番17の登録免許税の計算は、15万9,166円(㎡単価)×171.66(道路面積)×4193分の266(司法次郎が受ける持分)となります。(亡)司法和子さんが受ける4193分の266は乗じません(当該部分の免税を受けられるからです。)

⑤  租税特別措置法第84条の2の3第1項により一部非課税(注2)と記載をしておりますが、なぜ「一部非課税」なのかですが、今回の申請で、息子さんたる司法次郎さんが受ける相続分全部、 (亡)司法 和子さんの建物分は課税されるからです。

2/2 登 記 申 請 書

登記の目的     司法和子持分全部移転
原因        令和3年4月17日 相続
相続人       (被相続人 司法和子)
東京都〇×区〇△四丁目7番11号
持分後記記載のとおり 司法次郎
連絡先の電話番号 080-××××-××××
添付情報
登記原因証明情報(一部前件添付) 住所証明書(前件添付)
代理権限証書(前件添付)
令和4年11月19日申請 東京法務局〇×出張所 御中

課税価格        移転した持分の価格 金1,208万4,000円
登録免許税        4万8,300円

その他事項  送付の方式により登記識別情報通知書・原本還付書類の交付を求め   ます。

送付先の区分    申請人の住所

不動産の表示
所  在    〇×区〇△四丁目
地  番    1289番13
地  目    宅地
地  積    134.48㎡
上記持分2分の1 (亡)司法 和子
(此の価額 1,070万2,385円)
所  在    〇×区〇△四丁目
地  番    1289番17
地  目    宅地
地  積    171.66㎡
上記持分4193分の266
(此の価額 51万9992円)
(㎡単価 15万9,166円)

所  在    〇×区〇△四丁目 1289番地13
家屋番号    1289番13
種  類    居宅 共同住宅
構  造    木造瓦葺弐階建
床面積     1階 75.94㎡
2階 77.04㎡
上記持分2分の1
(此の価額 86万2,600円)

ABOUT ME
自分でやる相続登記・名義変更作成委員会
大阪司法書士会所属の司法書士Xです。司法書士歴15年です。